訪日観光客と二重価格問題(インバウンド対応の課題と改善策)
日本は、四季折々の美しい風景、世界的にも評価の高い料理、そして独自の文化を楽しめる観光地として、近年ますます多くの訪日観光客(インバウンド)を迎えています。コロナ禍を経て、ようやく観光業が再始動し、街中では再び多くの外国人観光客の姿が見られるようになりました。しかし、そんな明るい兆しの中で、にわかに注目を集めているのが「二重価格」という問題です。
二重価格とは何か?
「二重価格」とは、同じ商品やサービスに対して、日本人と訪日外国人で異なる価格を設定することを指します。例えば、同じ観光地の入場料が、日本人は1000円、外国人は2000円と設定されていたり、飲食店のメニューに外国人向けだけ高額な価格が表示されていたりするケースが報告されています。
表面的には、言語対応やサービスの差といった名目が付けられている場合もありますが、実際には説明も不十分で、不透明な価格設定に疑問の声があがっています。
なぜ二重価格が発生するのか?
このような二重価格が発生する背景には、いくつかの理由があります。
1)インバウンド頼みの収益構造
コロナ以前から、地方自治体や観光業者は、外国人観光客による消費を成長戦略の柱にしてきました。特に地方の観光地では、日本人観光客の減少を補う形で、インバウンドに依存せざるを得ない状況が続いています。そのため、外国人からより多くの収益を上げようとする圧力が働きやすくなっています。
2)情報格差の存在
日本語でしか価格情報を提供していない施設が多く、訪日観光客は「英語のホームページ」や多言語サイトを通じて断片的な情報しか得られません。そのため、現地に到着して初めて価格の違いに気づくというケースも少なくありません。
3)言語対応や人件費のコスト
一部の事業者は、「外国人対応には英語スタッフや翻訳費用がかかる」として価格差を正当化します。しかし、それが妥当な範囲かどうかについては議論の余地があります。
二重価格がもたらす問題点
一時的には収益が上がるかもしれませんが、長期的には大きなデメリットを招くリスクがあります。
信頼の低下
訪日観光客の間で「日本では外国人は不当に高い料金を取られる」といった印象が広がれば、再訪率の低下やSNSでの悪評につながります。観光立国としてのイメージダウンは、日本全体のブランドに影響を及ぼしかねません。
多文化共生の妨げ
観光だけでなく、移住やビジネスなどを目的とした外国人との共生社会を目指す上で、不公平な価格設定はその理念に反します。観光客に対する差別的な扱いが常態化すれば、日本社会全体の国際化にもブレーキがかかるでしょう。